2016年8月4日木曜日

「司書の書誌」第35回 司書の制限

日本でも、ついにKindle Unlimitedが開始されました。

これは、月額980円で、Kindle上のコンテンツ(12万冊以上の本、コミック、雑誌および120万冊以上の洋書)を読み放題というサービスです(1度にダウンロードできるのは10冊まで。また、30日間の無料体験もありますので、その間に読みまくるという方法もあります(笑))。

ポイントは、Kindle上の全ての本が読める訳ではなく、参加していない出版社のモノはもちろん、作品を提供している出版社の本でも、Unlimitedの対象と対象外の作品があるというコト。
ただ、それでも、「絶対これでないといけない!」といった類の読書でなければ、おそらく、十分過ぎる量だと思いますし、それが1ヶ月980円で提供されるというのは、やはり、画期的だと思います(初期投資(端末代)はかかりますが、文字ベースのコンテンツなら、スマホで十分利用可能です(雑誌やコミックの場合は、カラーのタブレットが欲しいトコロですが……))。

ザっと見てみて、個人的に注目したのは、雑誌です。

雑誌というのは、大半の書籍と違い、全ての記事が欲しいというよりは、ある特定の記事が目当てで購入するコトが多いと思います。
つまり、欲しい記事と同時に、いらない記事広告も多く買うコトになる訳です。

先日も、ある雑誌でかなり欲しい記事があったのですが、上記のような理由と、なにより場所をとるために購入を見送ったのですが(どうしても必要になった場合は、国会図書館の複写を依頼するつもりでした(笑))、Unlimitedのリストを見ていると、見事に、その雑誌もありました。
これで、Unlimitedの契約中は、いつでもその記事を見るコトが可能になった訳です(しかも、コピィのように、「あの記事はどこに行った!」というコトもありません(笑))。

同じように考える方は多いと思いますので、このサービスの登場によって、今後、さらに紙の雑誌は売れなくなると思うのですが、それでも、これだけ多くの雑誌が参加しているというコトは、それなりの勝算があるのでしょう(もしくは、ヤケクソ?)。

とにかく、多くの方が、比較的安価で(価格のみを他の読み放題サービスと比べると、高い方ですが)、これまで個人では所有できなかったオーダの「本」に簡単にアクセスできる手段を手に入れたコトになります。
では、これは、今後、図書館にどのような影響を与えるのでしょう。

各種の手間制限を考えると、Unlimited(を始めとした読み放題サービス)で提供されている本を、わざわざ図書館で利用するヒトは激減するでしょう(貸出返却のためにわざわざ図書館に行ったり、貸出期限を気にする代わりに980円払うヒトは、かなりいるような気がします)。今後、そのコンテンツの提供量が増えれば、なおさらです。

すると、そういった本を利用していた方達は図書館を利用しなくなりますので、当然、図書館でしか提供されていない資料のために図書館を利用するようになるはずです。
では、そういった資料を必要とする利用者は、全体のどのくらいの割合でしょうか?また、そういった資料は、どの程度あるでしょうか?

そう考えると、あまり図書館にとってはありがたくないサービスのようにも思えますが(笑)、個人的には、実は、ポジティブに捉えています。

図書館の目的は、あくまでも、必要なヒトに、必要な時に、必要なモノを届けるコトです。

より効率的な方法があれば、そちらを選択してもらうコトは、むしろ、その目的にかなっていますし、ある部分がスクラップされれば、新しいコトをビルドする余地も生まれます。

そして、今は図書館でしか提供されていない資料も、「手のひらの上の図書館」で全て見るコトができるようになった時、図書館も、全く新しいステージに入ると思います。
(もはや、「図書館」ではないかもしれませんが(笑))

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