2016年6月16日木曜日

「司書の書誌」第28回 司書の選書

「図書館の本は、3回選書される」と言われたりします。

まずは、もちろん、図書館に本を受け入れる時の選書。

図書館は、新しく出版された本の中から受け入れる本を選んでいると思われているかもしれませんが、確かに、その部分は大きいモノの、利用者の希望やその他の理由によって、少し前に出た本や、場合によっては古書の中から本を選択するコトもあります。

日本では、1年間に約8万点の本が出版されると言われますが、それだけでなく、大げさに言えば、現在流通している全ての本が選書の対象になるので、その数は膨大になります(実際には、さらに寄贈もあります)。

一方で、どの図書館も、削減される傾向にある資料費という予算の制約があり、その兼ね合いの中で、自分の図書館にとって必要な本を選ぶのが、かなり大変な作業だというコトは、ご理解いただけると思います。
実際、この部分だけで何冊も専門書があるくらいですし、図書館が図書館としてあるための必須の作業となります。

次に、そうやって受け入れた本が少し古くなり、書庫に入れる時の選書です。

上記したように、資料費の削減は、どこの図書館もアタマの痛い問題ですが、それでも、毎年、一定量の本は増えていきますし、雑誌に関しては、そのスピードがさらに早い場合もあります。
反面、図書館の建物や什器の大きさは、建築時にほぼ決まっていますし、そのコトが、すなわち、本を所蔵できるスペースの制約となります。

その中で、いわゆる「開架」(通常、来館者が普通にアクセスできる書棚)といわれる部分は、新しい本が入れば入っただけどんどん空きスペースがなくなっていき、最終的には満杯になってしまいますので、そこからあふれた本を、どうにかしなければなりません。

その際、一般的には、閉架(書庫。利用者は入れないコトが多い)に移すというコトが行われますが、単純に、古い資料から順に書庫に押し出していけばよいという訳ではありません。
古くても利用が多く、人気のある本はいくらでもありますし、また、調べモノに必要な基本的な図書は、多少古くても、(一般的に)利用がしにくい閉架に移す訳にはいきません。

ここで、日頃の利用動向やこれからの利用を見越し、どの本を閉架に移し、どの本を開架に残しておくかという見極めは、司書の力量やセンスが試される、とても重要な場面だと思います。

最後に、さらに経年し、最後は廃棄する時の選書です。

開架と同様、書庫にも当然、物理的な限りがあります。
その部分を超える本の量になった場合は、非常に残念ではありますが、本をなんらかのカタチで処分(廃棄だけでなく、最近ではリサイクル本として、利用者に提供される場合もあります)しなければなりません。

その際も、完全に破損して使えなくなった本等は別ですが、やはり、今後の利用を考えたり、たとえ、スグの利用が見込めなくても、他にその本を持っている図書館がない場合等は、簡単に廃棄できないコトもあります。

処分の際の選書は、上記の2つの選書と違って可逆性がありませんので、利用だけでなく、資料の保存という面も含め、非常に慎重に対応しなければなりません。

というように、図書館にある本は、司書が、自身の知識や経験やセンスを総動員して、セレクトした本によってあふれていると言えます。

……とはいえ、個々の利用者から見れば、時に、首をかしげたくなるような本があるのも事実だと思いますが(笑)、その際の、「総合的に判断して」という司書の説明の中に、上記のような事情もあるコトを思い出していただければ、とても嬉しいです。

0 件のコメント:

コメントを投稿