2016年6月23日木曜日

「司書の書誌」第29回 司書の節度

具体的にリンクを貼るのは控えますが、図書館が、ベストセラ本の寄贈を呼びかけているコトが、ごく一部で(図書館の場合、いつもそうですが(笑))話題になっています。

掲載方法は図書館によって少しずつ違うと思いますが、だいたい、予約の多い本のランキング(数百人待ちとか)をホームページや館内に掲示したりして、その上位にある本の寄贈を、利用者に呼びかけるスタイルです。

ボクは、是非が議論されるような事柄は、大抵の場合、まぁ、ヒトそれぞれ事情や理由があるだろうと思う方なのですが、さすがに、コレについてはマズいんじゃないかなと思います。

確かに、何百人も予約が入っている本について寄贈の呼びかけをするコトは、こと、図書館と利用者の関係だけを見れば、どこの図書館も予算(資料購入費)が十分でないコトを考えると、非常に合理的な措置のようにも思えます。
しかし、それらの本が、すでに絶版等で、市場で入手できない本ならともかく、そうでないならば(それが、ベストセラです(笑))、やはり、積極的な呼びかけは、図書館自らの首を締めるような気がします。

ボクも、司書課程で、某要求論系有名教授の薫陶を受けたひとりなので、利用者の要求に最大限応えるべきだという思いは、割と根っこの方にしみついています。なので、このような方法を採る図書館側の事情やキモチは分かるつもりです。
しかし、実際の数値的なエビデンスはともかく、ただでさえ、図書館のせいで自らの権利や利益が侵害されていると思っている作家や出版界の方が存在する状況で、これをしてしまうと、それこそ、最後の信頼関係がなくなってしまうような気がするのです。

少し前に「図書館の複本購入」が話題になりましたが、ついに、購入すらしていないという……

利用者からすれば、本は読みたい時が読みたい時ですし(笑)、中には、強い口調で図書館のカウンタで詰め寄る方もいるかもしれません。

しかし、「情報」はなんの労力もかけずに勝手に生まれるモノではありません。
そして、それを生み出すコトで生活をしているヒトがいます。

利用者のみなさんも、ご自身のお仕事で提供しているモノやサービスを、公共セクタがタダで配ったり、さらに、もっと配るモノを増やすために、多くのヒトにタダでの提供を呼びかけていたら、どう思うでしょう……?

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