2016年9月22日木曜日

「司書の書誌」第42回 司書の無料

「図書館有料化」のススメ

公共図書館は、なぜ、無料(タダ)で本を貸すのでしょう?

答えは簡単。

この記事にもあるとおり、法律、つまり、「図書館法」第17条に、
(入館料等)

第17条 公立図書館は、入館料その他図書館資料の利用に対するいかなる対価をも徴収してはならない。
と定められているからです(いわゆる、図書館の「無料原則」)。

……ただ、これでは答えになりませんよね(笑)。
そもそも、なぜ、法律で図書館が無料と定められているのでしょう。

今なら、「そんなのあたり前だ」(記事のコトバを使うなら、「自明」)と言われそうですが、実は、全くそんなことはありません。
日本でも、戦前は、図書館は閲覧料(名称は違うかもしれませんが)を払って利用するのが普通でしたし、海外に目を向ければ、今でも図書館利用に料金を徴収する国は珍しくありません。

また、一般的に図書館と同様の文化施設と思われている博物館美術館は入場料を徴収しています。

実は、「博物館法」(美術館もここに含まれる)の第二十三条にも、図書館法と同様、
「公立博物館は、入館料その他博物館資料の利用に対する対価を徴収してはならない。」
という記述があるのです。
(ただ、その後、「但し、博物館の維持運営のためにやむを得ない事情のある場合は、必要な対価を徴収することができる。」と続き、実質的には、必要な経費ということで、入館料等が徴収されています)

このような事情があるにもかかわらず、現在、図書館が無料なのは、ごく簡単に言うと、「民主的な社会を作る(維持する)ため」だと思うのですが、実際には、小説や(ポピュラな)雑誌の利用が多い実情を見て、


「どうして、読書という”趣味”だけ税金で賄われるんだ?」


と思っている(主に他の趣味をお持ちの)方もいらっしゃると思います。

たとえば、(ボクのブログに頻出する)作家の森博嗣さんも、

「図書館の何が問題かというと、それは一部の人の趣味のために、みんなの税金が使われているということだ。」
「市バスや地下鉄に乗る人だって「一部」の人であるけれど、それでも無料ではない。なのに、ずっと少ないほんの一部の人間の趣味のために、何故税金が消費されなければならないのか。」
と書かれています(『常識にとらわれない100の講義』)。

公共交通機関の件は記事の中にも出てきますし、その他にも、同様の考えを持つ方は割といるようで、現に、ボクの親戚にも、自分の子どもが町の図書館でさんざん本を借りているのにもかかわらず、

「オレは、図書館は許せん。オレの趣味のクルマには、税金が使われない」

と言っていました(笑)。

この点以外にも、記事にもあるように、図書館は、そもそも「商品」として作られたモノを、それがまだ市場に出回っているウチに無料で提供しています。
何度かここにも書いていますが、もし、みなさんが、自分が仕事で提供している「サービス」を、公共セクタが無料で提供していたら、どう思うでしょう?

記事の趣旨とは違いますが、いずれにしても、図書館の「無料原則」には、上記のような意見を持つヒト達を納得させられるだけの根拠や理由があるのでしょうか……?

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