東海林さだおさんの「ラーメン店の七不思議」(『猫大好き』所収)というエッセイの中に、こんな一節があります。
「ラーメン店の店主は写真を撮られるとき腕組みをする」まぁ、このあたりは、多くのヒトが気づいているでしょうし、ヒトによっては言語化もしているでしょうが、東海林さんの真骨頂は、
そのポーズを一人一人見ていくうちに、もう一つの事実を発見した。というあたり(笑)。
「腕組みの位置が一般人より高い」
そして、さらに、腕組みの考察は進みます。
人は考えごとをするとき、思わずしらず腕組みをする。と続きますが、その肝心の意図の部分は、ぜひ、本文でご確認ください。
そういう思わずしらずの腕組みの位置より、ラーメンの店主は一段高く腕組みをしているのである。
(略)
この事実は、一般人の腕組みが思わずしらずなのに対し、意図的であることを示している。
で、文章は、さらに別の不思議、あの「タオル」についても言及されます。
最近のラーメン屋さんが、作務衣か、Tシャツにアタマタオルというのは、『ラーメンと愛国』をはじめとして、よく指摘されるコトですが、東海林さんは、その巻き方にまで言及しています。
どういうわけか、みんな眉毛はおろか目蓋のあたりまで下げて巻いている。そんなヤツ、おらんやろぉ~ですが(笑)、さらに考察は進み、一見、いかにも人のよさそうな東海林さんの、鋭い(キビしい)一面が顔をのぞかせます。
あれじゃ周りがよく見えないのじゃないか、と思うところまで下げている。
(略)
中には目蓋のところまでどころか、さらにその下のほうまで下げて、周りがよく見えないのか、顎を上げて周りの様子を窺う、というか、手探りでシナチクを麺の上に並べているというか、そこまでしている店主もいる。
どうしてもタオルがゆるむ。いわゆる「ドヤ顔」ですね(笑)。
ゆるんで下に垂れ下がってくる。
目蓋の下まで垂れ下がってくる。
というのとは違うのである。
ファッションとして垂らしているのである。
門外漢のぼくが、なぜそこまで断定できるかというと、
「これが粋なんだよね」
という表情がありありと見えるからである。
今さら東海林さんの慧眼に感心するのも、逆に失礼なような気がしますが、久しぶりに読んだエッセイは、やはり、格別でした。
で、文章では、さらに、まだまだ最近のラーメン屋のヘンや不思議が指摘されるのですが、その中に、こんな結論めいた一節が。
当世のラーメン店の店主は、どうも屈折しすぎているような気がしてならない。競争が激しい東京だとさらになのでしょうが、肝心のラーメンのクオリティだけでなく、差別化のため、やはり、店長(員)さんの「キャラ立ち」も必要なのでしょう。
普通でいいんじゃないですか。
普通でも充分やっていけるんじゃないですか。
そのほうがそっちもラクだろうし、こっちもラクなんだけど。
そのあたり、まだ、京都はのんびりしてるんですかね。
とにかく、普通でいいじゃないですか(笑)。
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