本来は、しばらく休んでいるこちらのブログで書く内容なのですが(笑)、「図書館目録」の世界では、「FRBR」(Functional Requirements for Bibliographic Records:書誌レコードの機能要件)という考え方があって、これからの目録規則は、基本的に、この考え方に則って改訂されていくと思われます。
……といっても、大抵の方は、何のコトだかサッパリだと思いますが(笑)、実は、意外と身近で関係しています。
例えば、今、みなさんが何らかの図書館目録で、『すべてがFになる』(以下、『F』)という本を検索し、2件の検索結果があったとします。
しかし、これは、2種類の全く異なった『F』という作品がある訳ではなく、同じ『F』という作品の、ノベルズ版(新書版)と文庫版がヒットしているコトが分かりました(この本には、いわゆるハードカバー版がないですが、本によっては、それも含め、3種類(以上)表示される場合もあります)。
つまり、この場合、内容としては同じ作品が、目録上は“違うモノとして”2件表示されるコトになります。
もちろん、文字が大きい方がいいとか、持ち運びやすい本がいいという理由で、本の判型が重要な要素になる場合はありますが、それでも、その作品がその図書館にあるかどうかが最優先事項だと思いますので、いきなり、同じ(ような)タイトルの本がいくつも並ぶよりも、まずは、自分が探している本があるかどうかが確実に分かり、そのあとで、(あるのなら)どの判型を選ぶという流れがよいのではないでしょうか。
そもそも、同じ作品が何らかの理由で2件以上別々にヒットすると、せっかく図書館により求めているモノがあるのに、それに気づかないという事態も発生してしまいます。
さらに、同じ作品でも、電子版や大活字版がある場合もあるでしょうし、もっというと、『F』の場合なら、図書館に所蔵している例は少ないとは思いますが(笑)、漫画版やアニメ版、さらには、ドラマ版もあるので、可能であれば、『F』で検索した時に、それらも一度に検索できれば、さらに便利ではないでしょうか。
そこで、FRBRという考え方が出てきます。
詳細は省きますが(というか、ボクがよく分かっていない)、FRBRという考え方では、まず、作品には、「著作(Work)」という抽象的なレベルがあり(『すべてがFになる』という作品そのもの)、その次に、その作品がどのように表現されているかという「表現形」(expression。この作品の場合、先程出てきたアニメ版やドラマ版の他に、いくつかの外国語版もあり、全く違う形式で表現されているモノがあります。また、古典作品の場合なら、現代語訳版等がこれにあたります)というレベルがあり、さらに、その同じ表現形の中でも、それが、どんな形式(ノベルス版、文庫版や、電子版等)で発行されているかという「体現形(manifestation)」というレベルがあり、その次に漸く、物理的なそれぞれの本の単位(「個別資料(item)」。現在の図書館でいう「ローカル」とか「所蔵」という単位)で捉えようとします。
残念ながら、今の日本の図書館目録で、その考え方をキッチリ生かしているモノはまだないと思いますが、実は、不完全ながらも、一部、それを実現している目録が、図書館以外の、みなさんがよくご存知のトコロにあります。
そう、Amazonです。
少し前から、Amazonである本(例えば、『F』)を検索すると、「その他の形式およびエディションを表示する」というカタチで、その作品の文庫版やKindle版が同時に表示されます。
もちろん、Amazonの場合、「売らんかな」が目的なので、現在、購入が可能な媒体のみ(ただし、その中には中古も含まれる)なので、資料全体としての網羅性はありませんが、Amazonとしての目的は十分に果たしていますし、利用する側も、このカタチでの表示が便利だと思っている方は、多いと思います。
ただ、残念ながら(?)、現在買える本でも、出版社が違う場合は、一緒に表示されません(ちなみに、同じ文庫の出版社の違いは、FRBRの何形の違いか分かりますか?)。
この辺りこそ、図書館の真骨頂だと思うので、できればAmazonより先に実現したかった……(笑)
とにかく、この件は、進化論で言うトコロの「収斂の法則」というか、“みんなの便利”という同じゴールを追求すると、別の道からでも、結局、同じトコロに行き着くという、いい例なのかもしれません。
(もしくは、Amazonの中に、図書館情報学をおさめているヒトがいる可能性は、十分考えられますが)
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