2015年12月24日木曜日

「司書の書誌」第4回 司書の所持

興味のない方は全く気が付かないと思いますが、以前より、図書館での本の切り取り被害に関する報道が増えています。

報道が増えたのは、図書館への関心が高まりつつあるのが原因かもしれませんが、単に、以前より件数が目立って増えてきているのかもしれません……

図書館における切り取りや書き込み、また、汚損・破損は、本当に深刻な問題です。
悪意がある場合は言うまでもありませんが、たとえ悪意がないうっかりでも(雨の日にカバンに図書館の本を入れておいたらビショビショになったとか、本ごと洗濯してしまったとか、ペットが齧ったとか……)、本に対して非可逆的な損傷が加えられるという点では全く同じです。

さらに、本の一部ではなく、全体がなくなる「盗難」もあります。

もちろん、図書館でも対策は講じていますが(被害にあいやすい資料は目立つトコロに置く、出納処理が必要な書庫資料にする、BDS(勝手に持ちだすとブザー鳴るアレですね)を設置する等)、完全には防ぎきれません。
そもそも、正規の貸出を受けても、そのまま本が戻ってこないコトもあります。
(意図的な場合もありますが、それ以外でも、様々な理由があります)

それでもまだ、弁償その他の方法で再入手可能な本はいいですが、絶版等で既に新しいモノが買えない場合は多いですし(特に、雑誌は絶望的)、モノによっては、世界にその1冊しかないコトもあります。

図書館というのは、公共の資産を、いっときでもほぼ専有し、自宅に持って帰って使用・利用できる、非常に稀有な施設だと思います。

もちろん、図書館以外にも公共のレンタル事業はありますが、それらはある程度、最初から使用による破損・劣化が想定されているような気がします。
図書館でも、絵本については同様な場合もありますが、それ以外の本は、本の中身(コンテンツ)だけが利用され、その容れ物(コンテナ)は、基本的には不変であるという前提で制度設計がされています。

以前、カウンタで、「こんな(非常に高価な)本まで貸し出しが可能だなんて、この図書館は我々利用者を信頼してくれている」と言われたコトがあります。

そうなのです。
図書館の貸出の前提は、図書館と利用者の相互の信頼の上に成り立っているのです。

ただ、図書館の本は、(一部、寄贈はありますが)税金で購入されている、納税者(利用者)のモノです。
そのため、可能な限り、利用者に自由に使ってもらいたいのはやまやまですが、一方、我々図書館員は、それら、全納税者からその本の管理を任されている以上、適切に本を保管・保存し、全ての利用者に平等に提供する責任があります。

そして、残念ながら、図書館に勤めていると、「自分の本でないから大事にするヒト」と、「自分の本でないから粗雑に扱うヒト」がいるように思います。
そのため、やむをえず利用を制限せざるを得ない場合もある訳です。

切り取りの記事等では、よく、「利用者のマナーに訴えるしかない」というような発言を見かけますが、その部分て、マナーというか、もっとヒトとしての在り方の問題のような気がします。

図書館には、「利用者教育」という、ちょっと上からの用語もありますが(笑)、う~む、もちろん、そこでもないですよね。

どうしたらよいのでしょう?

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